ブショネ(コルク臭)に関する当社の対応ポリシー

(株)ワンモアグラスのブショネワインに対する対応の方針


※結論から言うと※
ブショネのワインの交換・返金は基本的にお受けできません。ご了解ください。
但し、
ブショネがあった事は、ご連絡頂ければ幸いです。


※もう少し詳しくお話しすると※
<ブショネとは>
ブショネとはワインの専門用語で、主にコルクが内部に隠し持っていた汚染物質(主に2,4,6トリクロロアニソール、略称TCA)によって、ワインにカビ臭いニオイがついてしまう現象で、100本に数本の割合で発生すると言われています。
ほんの少しのTCAの混入であっても、ワインのおいしさは大きく損なわれてしまいます。
飲んでも人体には全く悪影響がないので、頑張れば飲めますが、もちろん本来の味ではありません

<買ったワインがブショネだったら>
このブショネのワインに遭遇してしまった場合、そのワインは返品できるのか?
何万円もする高額なワインがブショネだった時、どうするのか?

もちろん消費者の普通の心理としては、お金を払って買ったものが本来のものと違っていれば、交換・返金したい、できて当然、と思うでしょう。
ところが、ことワインに関して、問題はそう簡単ではありません。

<検証の難しさ>
程度の強いブショネは味も香りも強烈なので、間違いようもありません。
しかし「これって、ブショネなのかな?」と迷う、微妙なケースも時々ありますね。
そしてじっくり飲んでいるうちに「気のせいだった」なんて経験もおありではないでしょうか。
昔あるポムロールのワインを扱っていたときに、インポーターさんが「あのワイン、ブショネじゃないのにいろんな店のソムリエがブショネだと言ってくるんです。」と漏らしていた事がありました。
確かにそのワインは、開けたてに一瞬ブショネと取り違えるような臭いがしました。でもほんの少し時間を置くとその臭いは消えて、素晴らしいボルドーの典型的な芳香が立ち上ってくるのです。
このようにブショネの判別は、時にプロをも戸惑わせる事があります

また、ワインの中の成分は抜栓後、刻一刻と変化していきます。
栓を開けて1日もたてば、その中身は抜栓前のものと全く別物になっています。
抜栓して人間がブショネと判断したものを、後日化学分析しても、かなりの割合でTCAが検出されなかった、という過去の研究もあります。

そしてレストランと違い、ショップで購入したワインは主にプライベートな空間で飲まれるので、
悪意ある人間が高級なワインの空き瓶に安いワインのブショネを入れ替えても、わかりませんね。

ブショネは間違いなく、確実に存在します。
でも、それを客観的に明確な基準をもって取り扱うのは、非常に難しいのです。

<返品できたら、どうなるか?>
もし、それでもお客様がブショネと言うなら、と、言われるまま返品・返金に対応したとします。
どんな事態が起きるかは想像に難くないですね。

返品の中心となるのは、当然、高級ワインでしょう。
高いものだから、ちょっと変だと思ったら、とりあえず返品。
そして自分が納得するまで、交換。
消費者には夢のようですが、酒屋とインポーターには悪夢ですね。
どちらも、あっという間に潰れます。
高級ワインの生産者も、苦労して作っても難癖ばかりつけられて報われない、と低価格路線に変更してしまうでしょう。

これでは結局、我々が飲みたかったはずのワインが、なくなってしまいますね。

<コルクは悪者ではない>
コルクに関する問題はこのように様々なジレンマを抱えています。
ですが我々が忘れてはならないのは、
コルク栓の発明がなければ、現在あるような熟成を前提にした素晴らしいワインの文化はなかった
そして
コルク栓が発明されて以降、このブショネの問題を完全に解決した人はまだいない
という2点だと思います。

瓶熟して大幅に味わいが向上するお酒はワインだけです。瓶熟にコルクは欠かせません。
我々はブショネでなかった90数パーセントの場合、このコルクという素晴らしい天然物質から多大な恩恵を受けているわけです。
そして残りの数パーセントを0%にする技術を人類はまだ持っていない。

精根こめてブドウを育て、思慮深くワインに仕込み、最高級のコルクを選んでボトリング。

…それでもブショネは発生します

これは果たしてその生産者の責任なのでしょうか?
人類がまだ解決出来ていないことの責任を彼が取らなくてはいけないのでしょうか?

我々は、素晴らしい液体を作り上げる彼らを、応援しなくてはいけないはずですね。

<ワインはそういうものなんです>
確かに何万円もするワインがブショネだった場合の、金銭的・精神的ダメージは大きいです。
何年もワクワクしながら寝かせておいたワインが、開けてみたらブショネだった…
本当につらい瞬間です。
そして、もちろんあなたは何も悪くありません。

では、誰かが悪いのでしょうか?
生産者が悪いのか、インポーターが悪いのか、酒屋が悪いのか?

…先ほど述べたとおり、多くの場合、誰も悪くないんです。

だから、本当に申し訳ありませんが、
「ワインとはそういうものだ」
と思っていただくより他にありません。

<そこにこそ、ワインの魅力が宿る>
ワインの魅力は、ブドウのみならず、酵母、樽、そしてコルクという天然物質の、天然物質ゆえの危うさを抱えたままの、組合せの上に成り立っています。
大規模生産、機械収穫したブドウに培養酵母を添加してコンピューター管理で醸造し、スクリューキャップや合成コルクで瓶詰めされた画一的・工業生産的なワインも、もちろん多くありますし、それらが悪いとは思いません。
けれど私が皆さんにお届けしたいのは、こういったワインではありません。

自然の神秘と、生産者の誠実で思慮深い仕事から生まれ、時間に育まれた素晴らしいワインを飲んだ時の感動は何にも換えられないです。
その美味しさは、ほんの少しの抜栓のタイミングやグラスのチョイス、合わせる料理などでも変わってきます。
ワインの魅力の真髄とは、そういった微妙な差異にも影響される、大変不安定で生々しい要素のなかに、瞬間的に立ち現れるものだと思います。
それを愛好するのであれば、その不安定さゆえ時に起こる、ネガティブな結果をも受け入れる気持ちがなければならない。
そう思うのです。

まあ、そうは言っても現実にブショネのワインを前にすると、とてもそんな気持ちにはなれませんよね。
当然だと思います。
本当に申し訳なく思いますが、どうかご理解いただければと思います。

<どうしてもブショネが嫌なら>
どうしてもブショネのリスクを回避したい。
そんなときはどうすればいいでしょうか?

簡単です。
レストランでワインを飲めばいいのです。

レストランのワイン代金は健全な状態のワインであるという保証も含めての金額です。
その点を考慮すると、特に日本のレストランのワインの値付けは非常に良心的だと思います。
どうかワインショップと飲食店の利用を上手に使い分けて、ワインライフを充実させていただければと思います。

<と、いう事で>
長くなりましたが、私はそういった考えのもと、ワインを販売いたしますので、
ブショネによる交換・返金は基本的にお受けできません。ご了解ください。

但し、
ブショネがあった事はご連絡頂ければありがたく思います。

インポーターさんによっては交換・返金に対応してくれる場合があります。
(その場合ブショネの確認作業がありますので、ワインは絶対に捨てないでください)

また同じ銘柄でブショネが続くようでしたら、インポーターを通じて生産者にクレームを付ける事も出来ます。
自分の作るワインに見合わない品質のコルクを使っている生産者も残念ながら存在します。
そういった、顧客に対し誠実でない生産者は当然その責を追及されるべきでしょう。

生産者やコルクメーカーなどは、もちろん皆さんの「ガッカリ」を減らすように日々研究努力しています。
私も業界の一員として、お客様の声を彼らにフィードバックする責務はしっかり果たしていきたいと思っていますので、どうかご協力ください。

よろしくお願いします。

(株)ワンモアグラス代表 篠原直樹

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